板金曲げによる箱21個の組合せ加工、曲げ精度±0.02を実現
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材 質:
SUS304CP
板 厚:
1.0mm
サイズ:
60×60×30mm
精 度:
±0.02
個 数:
2個
納 期:
7日
ポイント
- 板厚のバラつきを考慮し高精度曲げ加工±0.02を実現
- 空気の流れを感じる箱形パーツ同士のスムーズな動き
- 金属でできていることを忘れてしまいそうな感覚を持つ作品
内容
今回ご紹介する事例は、職業訓練法人アマダスクール主催の「第30回優秀板金製品技能フェア」への出展するための作品です。ステンレス板厚1mmをレーザーカットで加工し、ベンダーによる曲げのみで箱形パーツを組み合わせた作品です。
コンセプトとして、箱形パーツの精度を上げ、箱形パーツ同士を出し入れした時のスムーズな動きを追及し、空気の流れが感じられるような機能を持った作品を作るということを目標に進めてきました。
作品の形状は4面を曲げた箱形の単純なものですが、その箱形のパーツを21個作り、大きいものの中に小さいものを入れ、組み合わせてできています。実際に製作してみると、板金で曲げたものを高精度に合わせるという事が、非常に困難な事だという事が分りました。
ただ入れば良いとラフな寸法で作ってしまえば簡単ですが、どうしても高級な箪笥の引き出しを出し入れした時のように、空気の流れを感じられるような感触を出したいと思い製作に入りました。
最初に取り組んだのは材料です。大きさの違う3種類の箱形パーツを製作して組んでみましたが、きつかったりゆるかったりして、まったく上手くいきませんでした。色々と調べたところ、板厚のバラつきが悪さし、原因の1つであることが分りました。
加工精度±0.02mmを出すために板厚の測定から始め、箱ひとつ毎にその誤差を調整し、実験を繰り返しながら製作を進めていきました。
完成したのち、精度と動きを確認したところ様々な事が分ってきました。
たとえば、大きい箱の中に小さい箱を入れると、空圧の影響で2秒~3秒程度の時間を掛け箱の底へ落ちて行くことが確認できました。また、箱を出し入れした時に空気の流れが感じられ、測定したところ21個の箱形パーツが同じ条件のもと、高精度で製作できたことで実現したことが分かりました。
更に箱パーツ同士をスライドさせると、金属であるにも関わらず絶妙に滑らかな感触が得られました。
精度を出すために色々と工夫をしましたが、コンセプト通りの作品ができたと思っています。


今回一番苦労した点は、加工精度±0.02mmを出す為に材料板厚の実測値を測定し、調整しながら曲げ加工をしなければならなかったことです。例えば1個の箱パーツが0.02mm狂うと21個目の箱で21倍の0.42mm狂ってしまいます。ここまで精度が出ていないと、今回のような作品は完成できなかったと思います。
箱パーツ同士の隙間と、曲げの立ち上がり寸法の両方をキープして完成させたことが、スムーズな出し入れを実現させるための不可欠な条件であったことが分りました。
当社では、過去にもこの技能フェアへ作品を出展してきましたが、今回で7度目になります。年を追うごとに力を入れ、これまでは毎回入賞を果しています。これからも更に上の賞を目指して取り組んで行きたいと考えております。