バネ材SUS301,加工要素が一直線上に連なる難曲げ
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材 質:
SUS301CSP-H
板 厚:
0.3mm
サイズ:
15×10×5
精 度:
±0.1
個 数:
2個
納 期:
14日
ポイント
- 複数の曲げ要素が一直線上にある
- 先端がR形状の隙間があるヘミング曲げ
- 重なったR曲げと立ち上がりの短い曲げ
- バネ材SUS301の複雑曲げ
内容
今回は、難易度の高い曲げを含むバネ製品の加工事例をご紹介いたします。
曲げの要素が多く、先端がR形状のヘミング曲げに加え、重なったR曲げ、立ち上がりが短い曲げがありました。この製品の最大の特徴は、これら全てが一直線上にあるというところです。
各曲げ要素を単体で考えると、当社の技術であれば問題なく加工ができますが、一直線上にあることで、様々な問題が生じます。複雑に重なり合う形状となっており、干渉するため、どこから形を作るかが非常に重要となります。
さらに、今回の材料SUS301は、バネ材の中でも硬くスプリングバックが大きいという特徴があります。その影響を大きく受ける形状であったため、とても難しい加工となりました。加工に使用した金型は、設計から製作までを全て社内で行っています。

<ヘミング曲げ>
先端のRはφ0.6と小さくさらにストレート部分に隙間がある特殊なヘミング形状でした。バネ材でスプリングバックが大きく、従来の工法では、先端のRを潰さないように曲げると折りたたみきることができず開いてしまいます。隙間を平行に保ったままこの形状にするためには、高度な技術が必要となります。

<重なったR曲げ>
製品の全貌はお見せできませんが、ヘミング曲げと繋がっており、どこから曲げても干渉する形状となっています。無理に曲げると先に曲げた箇所が変形してしまい、寸法に影響を及ぼします。R同士の位置関係を保つために、変形を抑える様々な工夫をしています。

<立ち上がりの短い曲げ>
先端の曲げは立ち上がりが短く、通常の工法では曲げることができません。今回は少し長めに伸ばしておいて、曲げた後にカットする工法を取りました。基準から曲げの先端に対して寸法公差があったため、展開長の調整が重要となります。

<絞り加工>
曲げに近い場所に絞り加工があります。こちらは内製の簡易金型で成形しています。他箇所の加工時に干渉してしまわないように、金型に工夫をしています。
複雑な形状であったため、工程設計時から干渉することがわかっていましたが、加工を進めていくと想定よりも多くの場所で干渉による変形が発生しました。もちろん完成形状で寸法公差が設定されているため、各箇所の形状をつくりながら、他の曲げとの位置関係と寸法のバランスを取ることが今回の加工の最大の難所でした。
バネ材の特性を理解し、これまでの経験から、様々な工法を組み合わせて加工を進めましたが、豊富な経験と実績がある当社だからこそ完成させることができた部品と言えると思います。複雑な形状やバネ材の加工でお困りの際には、是非当社までご相談ください。