銅板t0.5を絞り出し、カシメ加工のみで仕上げた板金プレス製の地球儀
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材 質:
C1100-1/4H
板 厚:
0.5mm
サイズ:
Φ100
精 度:
±0.2
ポイント
- 自社にて地球儀の3Dモデルを新規作成
- プレス技術を使った陸地部分の絞り加工
- 板材からカシメ加工のみで球形状を製作
- 絞り加工、曲げ加工、カシメ加工の融合
内容
今回の事例はアマダスクール主催の「第28回優秀板金製品技能フェア」へ出品するために製作した製品の紹介です。当社の技術を活かした上で相応しい製品とは何なのか、突き詰めて考えた末に地球儀を製作することになりました。
地球儀は球体ですが、その形状をあえて板金プレス加工で作ってみては面白いのではないか、また、地球儀の陸地部分を絞り出しで表現し立体的な地球儀を作りたいという思いがあり、今回の形状に決定いたしました。

最初に取り組んだのは地球儀の設計です。陸地部分を絞り出す為に凹凸のある地球儀の3Dソリッドモデルが必要でした。当初はインターネット上で検索すれば簡単に手に入ると思っていましたが、探してみると、今回の製品に相応しいソリッドモデルをなかなか入手することができませんでした。
その為、自社でソリッドモデルを製作しました。
地球を図の様に経線緯線で144等分し1ピースずつ作成し、最後に1つに合体して地球儀のソリッドモデルにしていきました。このモデルの作成にかなりの時間を費やす事になりました。

次の工程は、陸地部分を絞り出す為の金型の設計と製作です。合体した地球儀のソリッドモデルを24個に分割し、絞り出すためにダイとパンチを24セット分製作しています。絞りの高さは銅板板厚0.5mmに対し0.3mmに設定し設計を進めました。絞り金型はマシニングセンターを使って図の様に6セットずつ4回に分け削り出し製作しています。
最終的に球形状にしなければならない為、絞りテストを繰り返し1回で絞れる様に製作しています。地球儀用の絞りブランクはファイバーレーザを用いて加工しています。

絞り加工が終わったら次は曲げ加工です。板金材料の為、板同士をそのまま突き合わせてカシメ加工をする事ができません。そこで、板材を1度曲げ加工し、その曲げ加工をした面にカシメ加工する為のフック形状の加工を施す事にしました。手間は掛かかりましたが、板金材料の板同士を上手くカシメる事が出来ました。

次の工程は球形状へのカシメ加工です。球形状にする為の方法として、接着やロウ付け等他にも色々と考えられますが、今回の地球儀の接続方法は板金プレス加工にこだわり、カシメ加工で球形状にする事にしました。
しかし、そこでカシメ加工では最後まで球形状にする事が出来ないということが問題になってきます。
24個のパーツを1つずつカシメ加工して行くのですが、球形状の半分位までは問題無く組み立てる事が出来るのですが、半分を過ぎるとカシメ加工用の工具が球形状の中に入らない為カシメ加工する事ができません。
色々と考えた末に思い付いたのが、写真の様に北半球と南半球を別々に組み立て、その後半球同士を接続する方法でした。その為、新たに部品が必要になりましたが、この方法を使う事により問題無くカシメ加工のみで球形状の地球儀を製作にする事が出来ました。
今回の地球儀製作は挑戦に次ぐ挑戦でした。弊社では常日頃から色々な形状や用途の製品を製作しており、絞り加工やカシメ加工なども幅広く対応させて頂いております。しかし、板金材料である板材を球形状に絞り、カシメ作業のみで球形状の製品を作るのは初めての試みでした。
製作した地球儀の直径は4インチ(約φ100mm)です。何故このサイズにしたかと言いますと、24個に分けたピースの絞りの深さが8mm程度で収まるからです。板厚0.5mmの絞りには丁度良い深さだと予測して大きさを決めました。
板材を絞りとカシメ加工だけで球形状にするのは非常に大変な作業でした。良い方法が見つからず、接着剤を使って接着してしまおうか、両面テープで市販のボールに貼り付けてしまおうかなど、何度もくじけそうになりましたが、カシメ加工にこだわり、板材で球形状の地球儀を作る事が出来ました。
その甲斐あってか、アマダスクール主催の優秀板金製品技能フェアでは「審査委員会特別賞」を受賞する事が出来ました。